ホーム > グループ情報誌「Link」 > 対談 > 西水 美恵子氏 × 石黒 和義 本物のリーダーは燃える情熱に根ざす


(左)元世界銀行副総裁 西水 美恵子氏
気鋭の経済学者であった西水美恵子さんは、ある壮絶な体験を経て銀行家となった。
その目的は「貧困のない世界をつくる」こと。その理想に挑んだ西水さんは、いつしか"鉄の女"と呼ばれ、職場である世界銀行の副総裁として、燃える情熱から湧き起こるリーダーシップを発揮。世界を変える仕事を、いくつも成し遂げていった。
世銀を離れても、常に新たな道を拓いていく西水さんのパッションに、日々の行動への大いなる刺激を受けた。
石黒 : かんてんぱぱの伊那食品さんは、JBグループのお客様でもありますが、長野の信州に行ってこられたと伺いましたが。
西水 : 昨年の春のことです。人間の幸せからの発想を取り入れた経営をしておられるということで、伊那食品に関心を持っていました。私はブータン王国で、国民の幸福を中心に政策を考えることを学び、それを現実にどう実践するか一生懸命考えてきました。それが、伊那食品さんでも同じように、人間の幸せを中心とする哲学を経営に反映して取り組んでおられた。
石黒 : 私もお邪魔をしたときに、塚越寛会長と営業目標について話したことがあります。「営業の数値目標はない。永続的な成長が大切で、急激に伸ばすことは社員にとって必ずしも幸せではない」と徹底しておられました。高い目標を掲げて常々成長を声高に言ってきた私には、企業の存在価値をあらためて考えさせられました。
西水 : 何のために成長するのかということですね。
石黒 : お話に出ましたブータンを最近訪問されていたとか。先般来日されたワンチュク国王陛下と民間出身のペマ王妃との結婚式は、話題になりました。
西水 : その結婚式の祝典に招待され、夫婦で参加しました。首都ティンプーの大会場に、国民が何万人も集まって祝福するというもので、外国からは各国の大使と南アジア地域の若いリーダーたち、報道陣と私たち夫婦だけの参加でした。国王が結婚の報告をすると、国民が「タシデレ(おめでとう)」と叫び、国王に王妃へのキスを要求し、国王が応えるなど、本当に国民のための披露宴でした。
石黒 : ブータンと聞くと、私たちにはシャングリラのような秘境の情景が思い浮かびます。
西水 : 世界銀行(世銀)在籍時に初めて行った1997年から毎年1回は訪れています。世銀を辞めるとき、お別れの挨拶に行くと、先代国王陛下(雷龍王4世)から「これから毎年一回は観光客で来るように」とのお達しを受けました。ブータンは九州ほどの国土に人口は約67万人。そういう小さな国の指導者層は親戚筋が多く、気を使わなければならず相談相手がいなかった。外国人の私の方が気が紛れて、口も堅いと見込まれて「私はゴミ箱ですから全部吐き出してください」と話し相手になることが多く、その役目を続けてほしいという思いもお持ちだったのでしょう。