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早稲田大学大学院教授(早大博士)
早稲田大学電子政府・自治体研究所所長
小尾敏夫
早稲田大学大学院教授(早大博士)。早稲田大学電子政府・自治体研究所所長。専門は電子政府国際情報通信政策、日米欧IT産業比較、CIO。慶應義塾大学経済学部卒。同大学大学院終了後、国連開発計画の企画担当官として、ニューヨーク本部、パキスタンに赴任。コロンビア大学日本経済経営研究所日本代表兼主任研究員、労働大臣秘書官などを経て現在に至る。5年前、早稲田大学に大学院CIOコースを設置し、3年前にCIO研究の総本山として国際CIO学会を創設。世界13カ国に支部を置く国際CIO学会連合会の第2代会長に就任。著書に『CIO』(電気通信協会)、『情報通信リエンジニアリング』(講談社)など多数
早稲田大学電子政府・自治体研究所客員専任講師
岩崎尚子
早稲田大学電子政府・自治体研究所客員専任講師。早稲田大学大学院国際情報通信研究科修了。国際情報通信学博士。専門はCIO。現在、早稲田大学電子政府・自治体研究所次長。国際CIO学会幹事。『CIOの新しい役割』(かんき出版)、共著書に『CIO学ーIT経営戦略の末来』(東京大学出版会)がある。
コアコンピタンスは1980年代後半から90年代前半にかけて、米国の多くの大企業を蘇らせたロンドン大学大学院ゲイリー・ハメル教授とC・Kプラハード教授が企業の中核的な競争能力にフォーカスした新しい戦略的手法である。両教授は、「ハーバード・ビジネス・レビュー」に90年に掲載した「The Core Competence of the Corporation」の中で、「コアコンピタンスは企業の活動分野における技術やノウハウであり、様々な生産技術を調整し、複数の技術的な流れを統合するものである」と定義した。
他社には真似のできない自社の価値を提供する中核的な力―いわゆるコアコンピタンスを構築するために、企業はこれまで多くの変革を試みてきた。各企業は独自の強みを活かしながら、分散化した社員のナレッジを社内全体で共有しあい、新しいシナジー効果を発揮する戦略を図ることによって、世界有数の製品技術や品質を生み出してきたのである。
たとえば、それらはトヨタの「プリウス」を生んだハイブリッド技術であり、プラザ合意後の超円高を徹底したユーザーニーズ調査に基づく選択と集中で乗り切ったシャープの液晶開発であり、世界各国、各都市、各地域のグループ企業や顧客からのニーズ、トレンド、ライフスタイルなどの最新情報を収集することによって商品開発体制を敷いてきたユニクロのR&Dであり、あるいは文房具やOA機器などの注文を企業からインターネットや電話、ファクスで受付け、原則翌日配達を可能にしたアスクルの販売モデルなどである。
これらは他社の追随を許さない徹底したビジネス戦略といえるだろう。業界構造のめまぐるしい変化に短期的、あるいは長期的にどう対応すべきか、競合他社の中で主導的地位を築くためのスキルや能力とは何か。そのための組織変革は必要か否か―旧態依然の手法や概念からの脱却と、新しいビジネス展開を目指すシナリオ作りは、企業変革の要であり、成功への道標となる。
しかしながら、昨年9月に米大手証券リーマン・ブラザーズが破綻したリーマン・ショックによって世界経済は激変し、実体経済の急速かつ深刻な悪化を引き起こした。経済状況の深刻な悪化がコスト・人員削減に傾倒し、一部にはIT投資への意欲さえも削がれ、市場全体の成長率の鈍化を誘発している。さらに急速なグローバル化にともなう情報通信ネットワークの拡大深化によって、日本のみならず世界の企業を取り巻く経営環境は驚異的なスピードで大きく変化した。
しかしこうした100年に一度の経済危機と呼ばれる経済・社会環境の変化に対応しながらも、企業は競争力を維持向上させなければならない。そのためには以前にも増して経営資源やコアコンピタンスを最大限に活用することや、イノベーションに取り組む姿勢が求められている。では、コアコンピタンスという戦略的手法において今日のCIO(最高情報責任者)にどのような役割、さらにコアコンピタンスが求められているのか、考えてみたい。